2016年09月28日
海用ロッドのガイド論
ソルト用ロッドガイドの選定
ロッドを新しく購入する際に、やはり気になるのがガイドです。
・どんな素材か
・どんな形状か
・どんなラッピングか
等、これも突き詰めていけば奥深い世界です。では、順に見てみましょう。
①どんな素材か
マタギ社の2016年カタログによると、主にソルトで用いられているガイドには次のような素材が
あるようです。
・チタンフレーム
・ステンレスフレーム/ゴールドチタンコーティング
・ステンレスフレーム/チタンコーティング
・ステンレスフレーム/ガンスモーク仕上げ
・ステンレスフレーム/Eカラー
この他に以前ではステンフレーム/クロムメッキ またダイワさん等でAGSガイド(カーボン素材)
のガイド等が存在するようです。では、素材による違いってあるのでしょうか。
大前提として、ステンレスは塩化物に弱い です。
淡水ではCr不働態による防蝕効果でほぼ腐食しないステンレスですが、塩化物に暴露される環境下では
腐食速度が速まります。加えて製品加工時に600度程の熱影響に晒されていればステンレスが鋭敏化(注)し
そこから通常鉄鋼並みの速度で一気に腐食が始まることになります。
(注)鋭敏化:ステンが600℃以上に加熱されると含まれるCrイオンが酸素と結合、炭化クロムを生成します。
この際その周辺からはCr原子が10%以下に欠乏し、そこから粒界腐食が始まることになります。
ステンレスの溶接部分が特に腐食しやすいのはその為です)
ですからステンレス素地のものはそもそも海水向きではないのです。
では、コーティングされたステンレスはどうなのでしょうか。
大きな落とし穴があります。チタン等Fe,Crよりも貴な金属がコーティングされている場合、犠牲防蝕効果は
一切期待できません。傷が入れば一発でアウト!コーティング効果が無いも同然になってしまいます。
傷が入れば・・・・ということは・・・!? あっ(察し)
ロッド造られる方ならもうお分かりですよね。いくらコーティングガイドといえども、ガイドラッピングの際に
ガイドの足、やすりで削りますよね。つまりは幾らその後エポキシでコーティングしようが、エポキシが
割れた時点で海水が入り込み、致命的な腐食を引き起こしていく、というわけです。
それだけではありません。すきま腐食という現象があります。狭隘な部位にはただでさえ腐食が進行しやすく
腐食要因となるイオンが濃縮されやすいため、腐食が加速されることになります。
以上の理由で、ソルト用として理想的な素材はチタンかカーボンということになります・・・・・が。
今度は剛性について考えてみることにいたしましょう。
チタンですと剛性については申し分ないのですが、カーボン素材はどうしてもたわみを生じます。
キャスト時、ファイト時、どうしても大きな負荷が掛かる場合に弾性変形の変位は大きくなります。
よってエポキシが割れやすくなってしまいます。ライトな釣りには最適でしょうが、負荷のかかる釣りには
不向きであると言わざるを得ません。
②どんな形状か
ライントラブルの少なさを鑑みると、Kガイドに限ります。そんなに難しい作業ではないので、Kガイドでない場合
打ち替えてみてもいいと思います。
③どんなラッピングか
ガイドを取り付ける際に糸を巻きエポキシでコーティングするのですがこの工程をラッピングと呼称します。
ロッド素地に直接ガイドを巻く手法をシングルラッピング、一度下巻してからガイドを取り付ける手法を
ダブルラッピング、さらにその上にもう一重ラインを巻く手法をトリプルラッピングと呼びます。
バスのライトロッド程度ならシングルラッピングで構いませんが、海水の釣り、特に負荷の掛かる
釣りですとダブル以上が安心です。特にロッドの曲率の高い所(曲がりの大きな所)はエポキシも
割れやすいので注意が必要です。私はジギング&キャスティング用ロッドはトリプルにしています。
安価なロッドですとこの辺りをケチるので気を付けましょう。
本日のまとめ
ガイド素材はチタンが無難。
Kガイドはトラブルレスで扱いやすい。
負荷の掛かる釣りではダブルラッピング以上を選択。
以上の点に気を付ければ、末永く愛用できるロッドと出会えるはずです。ロッドを作ったり改造される方も
参考にしてみてください。
お読みいただきありがとうございました。
編集チョウ
ロッドを新しく購入する際に、やはり気になるのがガイドです。
・どんな素材か
・どんな形状か
・どんなラッピングか
等、これも突き詰めていけば奥深い世界です。では、順に見てみましょう。
①どんな素材か
マタギ社の2016年カタログによると、主にソルトで用いられているガイドには次のような素材が
あるようです。
・チタンフレーム
・ステンレスフレーム/ゴールドチタンコーティング
・ステンレスフレーム/チタンコーティング
・ステンレスフレーム/ガンスモーク仕上げ
・ステンレスフレーム/Eカラー
この他に以前ではステンフレーム/クロムメッキ またダイワさん等でAGSガイド(カーボン素材)
のガイド等が存在するようです。では、素材による違いってあるのでしょうか。
大前提として、ステンレスは塩化物に弱い です。
淡水ではCr不働態による防蝕効果でほぼ腐食しないステンレスですが、塩化物に暴露される環境下では
腐食速度が速まります。加えて製品加工時に600度程の熱影響に晒されていればステンレスが鋭敏化(注)し
そこから通常鉄鋼並みの速度で一気に腐食が始まることになります。
(注)鋭敏化:ステンが600℃以上に加熱されると含まれるCrイオンが酸素と結合、炭化クロムを生成します。
この際その周辺からはCr原子が10%以下に欠乏し、そこから粒界腐食が始まることになります。
ステンレスの溶接部分が特に腐食しやすいのはその為です)
ですからステンレス素地のものはそもそも海水向きではないのです。
では、コーティングされたステンレスはどうなのでしょうか。
大きな落とし穴があります。チタン等Fe,Crよりも貴な金属がコーティングされている場合、犠牲防蝕効果は
一切期待できません。傷が入れば一発でアウト!コーティング効果が無いも同然になってしまいます。
傷が入れば・・・・ということは・・・!? あっ(察し)
ロッド造られる方ならもうお分かりですよね。いくらコーティングガイドといえども、ガイドラッピングの際に
ガイドの足、やすりで削りますよね。つまりは幾らその後エポキシでコーティングしようが、エポキシが
割れた時点で海水が入り込み、致命的な腐食を引き起こしていく、というわけです。
それだけではありません。すきま腐食という現象があります。狭隘な部位にはただでさえ腐食が進行しやすく
腐食要因となるイオンが濃縮されやすいため、腐食が加速されることになります。
以上の理由で、ソルト用として理想的な素材はチタンかカーボンということになります・・・・・が。
今度は剛性について考えてみることにいたしましょう。
チタンですと剛性については申し分ないのですが、カーボン素材はどうしてもたわみを生じます。
キャスト時、ファイト時、どうしても大きな負荷が掛かる場合に弾性変形の変位は大きくなります。
よってエポキシが割れやすくなってしまいます。ライトな釣りには最適でしょうが、負荷のかかる釣りには
不向きであると言わざるを得ません。
②どんな形状か
ライントラブルの少なさを鑑みると、Kガイドに限ります。そんなに難しい作業ではないので、Kガイドでない場合
打ち替えてみてもいいと思います。
③どんなラッピングか
ガイドを取り付ける際に糸を巻きエポキシでコーティングするのですがこの工程をラッピングと呼称します。
ロッド素地に直接ガイドを巻く手法をシングルラッピング、一度下巻してからガイドを取り付ける手法を
ダブルラッピング、さらにその上にもう一重ラインを巻く手法をトリプルラッピングと呼びます。
バスのライトロッド程度ならシングルラッピングで構いませんが、海水の釣り、特に負荷の掛かる
釣りですとダブル以上が安心です。特にロッドの曲率の高い所(曲がりの大きな所)はエポキシも
割れやすいので注意が必要です。私はジギング&キャスティング用ロッドはトリプルにしています。
安価なロッドですとこの辺りをケチるので気を付けましょう。
本日のまとめ
ガイド素材はチタンが無難。
Kガイドはトラブルレスで扱いやすい。
負荷の掛かる釣りではダブルラッピング以上を選択。
以上の点に気を付ければ、末永く愛用できるロッドと出会えるはずです。ロッドを作ったり改造される方も
参考にしてみてください。
お読みいただきありがとうございました。
編集チョウ
Posted by 鍵さん at 22:32│Comments(0)
│ソルトウォーター
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